Drops
目覚めていても どこか 夢のなか
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Dream Girl (オニュ)
2月も半ばなのに、まだまだ夜は寒い。そりゃそうか、だってもう23時だもん。
人通りがだいぶ減ったオフィス街。ときおり吹き抜ける冷たい風の中を、私はとぼとぼと歩く。
今日は仕事でひどい失敗をして、その処理のためにこんなに遅くなってしまった。
・・・いつまでも引きずってちゃいけない、そう思っても、迷惑をかけた同僚のフォローの言葉が甦ってきて、情けなさでいっぱいになる。
会社では我慢していたけど、もうダメ。景色がユラユラにじむ。
信号待ちで星空を見上げた。
・・・この空はオニュの国につながってる。
彼も向こうで頑張ってる。
弱音吐いちゃダメじゃない。次に会える日までがんばろうって、言い合ったんでしょ?。
・・・それでも、考えてしまう。
いま、あなたが向こうでも同じ空を見上げてくれていたらいいのに・・・
そしたら、この声が届くかもしれない。
「・・・会いたいな・・・」
信号が青に変わり、周りの人が一斉に渡りはじめる。なのに私は足を前に踏み出せなくて、立ち止まったまま。
点滅信号で急ぐ人に、ドンと肩がぶつかった。
よろめいた私の腕を、後ろから誰かがつかんだ。
はっとして、振り返ろうとしたその時、その人は私を後ろから抱きしめた。
『あぶないよ・・・』
全身が総毛立つ。
この声、抱きしめられたこの感じ。なんで、なんでここにいるの・・・・・?!
声も出せない私に、オニュは言った。
『いっしょ。会いたくて、ちょっとだけでもと思って、来た』
会社の前で待ってたの?
こんな寒い中で?
『あんまり出てこないから、帰りの飛行機に間に合うか心配だったけど・・・
会えてよかった。』
もう、涙でグジュグジュになってしまった。身体が震える。
「ふええ・・・」
あなたの顔が見たい。でも私、きっとひどい顔してる。
その時、オニュが私をクルリと自分に向けた。
『ヌナ、笑おう? せっかく会えたんだから。』
うん、そうだね。
話せる状態じゃないから、コクコクと頭で答えた。
にっこりとあなたが笑う。
その笑顔がとびきりで、また泣けてしまう。 もう・・・! 止められないじゃない。
『これを、渡したくて』
あなたが私の手に乗せたのは・・・
「Dream Girl ・・・!」
『まだ発売前だから。 こっそり、聴くんだよ?』
コクコク、コクコク。
『あ~あ、もう・・・ヌナの声が聞きたいのになあ』
苦笑いしながら、あなたはCDを抱きしめてしゃくりあげる私をぎゅっと抱いた。